ものを作るのが好きな人、嫌いな人

ものを作るのが好きな人と、そうでない人とがいる。どちらかというと、前者のほうが好奇心旺盛、また積極的で前向きな傾向にもある。だから、ものを作るのが好きな人は、もともと創意工夫にも長け、自らのアイデアを形にすることにも情熱を傾けられるのだろう。

どんな商売においても、その仕事でより繁盛するためには、他の商売がたきと一歩でも、二歩でも差をつけられるような、斬新なアイデアを持つことである。

販売店などを経営する方は、少しでも品物が目立つように、店内を少し凝った陳列にしてみたり、ショ-ウインド-そのものが目立つようにアイデアを凝らしたりと、こうしたちょっとした工夫も大事にする。ほんのちょっとの工夫が売り上げを上げるのに効果的なことを知っているからだ。

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ここでも大事なことは、実際にアイデアを形にしてみる、ということに尽きる。それが、ものを作るのが好きな人の手によれば、同じアイデアでもさらに磨きが掛かることになる。たとえば、お店の陳列棚をお店の雰囲気にあわせて、自ら作ってみるとか、目立った配色を施してみるとか、あるいは品物が美しく照らし出せるように、照明装置に改良を加えるなどだ。

自分でアイデアを出すのが苦手な人でも、他人からアイデア(ノウハウ)を聞くことで、それを形にできれば、まだいい。問題は、ノウハウは知っていても、それを実行しない人だ。いくら、よいアイデアを聞いてもそれを形にするのを面倒がっていては、話にならない。そういう人は、ものを作ったり、アイデアを形にすることには興味がないのだろう。

これが経営者の場合には、事業の結果にも大きく影響することになる。売り上げ向上にアイデアを絞った分、具体的な形にした分、事業は発展するのは当たり前。反対に、やらなければ、それだけの結果でしかない。これは商売の話だけではなく、あらゆる分野でも言えることである。

私は以前、某大学病院の研究室で働いていたことがある。大学病院には普通、各分野の研究ができるように、多くの専用の研究室がある。私はその中で、外科分野の研究室にいた。さらに、外科の実験を行うための実験室というのもある。

そこは、基本的には大学の実験室であるために、医師に成り立ての若いドクターなどが、博士論文作成のために、自らの研究に打ち込んでいるような場所だ。研究・実験のテーマは教授から与えられたりもする。もちろん、熟練医師によっても、医学の基礎研究や応用研究という名目で、さまざまなテーマの実験・研究が、実験室で行われている。

私は、そうしたさまざまな実験がスムーズに行くように、予め試薬を作っておいたり、器具を準備したり、あるいは動物の手術の助手などをしていたわけだ。そういうわけで、いろいろなお医者さん(先生)が実験をするのを見てきたが、やはり、同じ実験であっても、実験結果は如何にその実験方法や実験装置に工夫を凝らすかで、差が生じていた。

研究テーマは与えられたものであっても、実験の立て方や装置の工夫は一人ひとりの手に掛かっていたのだ。何度も同じ失敗を通ってきた中で、新たな活路が見出されたこともあった。こうした試行錯誤は実験につきものだが、中には挫折してしまう者もいる。実験に挫折してしまうのは、その実験にあった器具がなかったり、あるいは既存の装置に不備があることなども原因にはなっていた。

しかしながら、すべてを既存の器具や装置に頼り、それが見つからないとすぐに諦めてしまうというのは考えものだ。本来の実験とは、それを可能にする器具や道具を作るということまで含まれていると思うのだ。いずれにせよ、よい実験結果は、実験の立て方によっている。そして、それには実験のセンスにも係わってくる。だから、優れた研究成果を出す先生は、大体いつも決まっていたように思う。それは、実験装置を自ら工夫して組み立てたり、実験器具そのものも自分で作ってしまうほど、アイデアに長けた先生だったのだ。

実験には、実験動物として犬が使われることも多かった。ある期間、集中して肝臓移植の実験が犬を用いて行われたが、手術自体が成功しても術後の犬の様態はいつも思わしくなかった。当時、実験動物用の運搬ケージ(カゴ)はみな、金属性であり、また狭かったのだが、ある時、教授がこれを木製で広く作れないかと相談してきた。つまり、運搬用と術後の集中治療(管理)が同時にできるように、ある程度の広さを持ち、なおかつ保温効果のある木製のケージというわけである。

普通は、実験に使う器具や製品などは、実験動物専用の業者に注文するのだが、木製のケージはないので、作るしかなかったのだ。そこで、その任を受けることにした。早速、材料を買ってきて、十分な広さの(犬小屋のような)木製のケージを作り、それに車輪を設け、また点滴棒が備えつけられるようにもした。こうして、手術後の犬専用の「点滴棒付・集中治療管理ケージ」は完成した。

それ以来、術後の犬の回復率は高まった。だから、これも既存のものだけに頼らず、その時その時に応じた必要なものを自ら作り出す、ということが大切であることを示している。私は大学病院を去ったが、そのときの手作りの犬ケージはいまもまだ使われているかもしれない。

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