成功体験を持つことが大事

前項で述べた「笑いの効用」「笑顔の効用」は同時に、「ユーモア精神は発明思考をもたらしやすい」と前に述べた効果にもつながる。まず笑いや笑いの精神は脳に一連の反応を引き起こす。それは脳にとって好ましい刺激であり、この刺激が素晴らしいアイデアやヒラメキにもつながるというわけだ。そして、笑顔だけでも、また同じ効果をもたらすということを前項では述べたしだいだ。

ヒラメキや創造的な能力を活発化させるのが、脳内にあるA10神経だということは、いまではよく知られている。つまり、きちんとした生化学的バックボーンがあるのだ。さらに、創造性を高める脳内のホルモン物質なども幾つか知られている。そうした「創造性開花ホルモン」が脳の中に用意されているのなら、是非ともそれを効果的に分泌させてみたいと思われるだろう。

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では唐突だが、ここで梅干しを思い浮かべてほしい。とても酸っぱそうな梅干しのイメージだ。そして、それを口の中に入れてみてほしい。・・・ここで、思わずジワーと唾液がわいてくれば、真面目にイメージしてもらった証拠になる。もちろん、実際の梅干しがあれば、それを目の前にして、想像してもらってもよい(梅干しを見ただけでも唾液が出るはず)。そうすると、唾液が口から溢れてくるかもしれない。これはよく知られた条件反射の一つだ。

ところが、赤ん坊にはいくら梅干しを見せても、唾液は出てこない。なぜなら、赤ん坊にとっては、過去に梅干しを食べたという体験がないので、その酸っぱさが分からないからである。梅干しを一度でもなめて、顔がしわくちゃになるほど酸っぱかったという体験が、この反射には必要なのだ。だから、過去に梅干しをなめたことのない赤ん坊では、唾液分泌の反射が起こらない。そこが条件反射の名前の由来である。

それに対して、沸騰したての熱いヤカンに誤って手を触れたとき、無意識に手を素早く引っ込めたりするが、これが無条件反射というわけだ。つまり、過去にそういう体験をしていなくても引き起こされる反射だからである。もう一つ、体の反射というか、体の反応の例を述べてみよう。こわい映画やテレビ番組などを見たときの体の反応についてだ。

そのときには、血液の中の血小板の数が一過性に多くなることが知られている。血小板は怪我などで出血した際に、血を凝固させるように働くので、止血のための重要な役目を担っている。その血小板が増えるということは、体が何らかの緊急事態に対して備えている状態(防衛態勢)だとみることができる。

それが単に、スクリーンやテレビの画面上で起こっていることでありながら、体としては、実際に危険が身に迫っているときと同じ反応をしてしまうわけだ。こわい映画を見て「手に汗にぎる」ともいうが、この発汗現象も同じく、体が臨戦態勢に入っていることを示している。

このように、我々の体の中では、実にいろいろなシステムが働いているわけである。ここで何が言いたいのかというと、「我々の体は、そのときの精神状態に応じて、正直な反応をしている」ということと、「それが実際の体験でなくても(イメージだけでも)、体内のシステムは働く」ということだ。

このことは、過去に成功体験を持っていることが如何に大事なことか、ということを示唆している。つまり、これから何らかの成功を望んでいる人は、よりよい成功をするためにも、ほんとうは過去において多くの成功体験をしていることが望ましいのだ。

成功した際の喜びは、脳内ホルモンの分泌を促す。その分泌がさらに体と精神の状態を活性化させる。過去に成功体験をした人なら、そのときの喜びの感情も難無く思い起こすことができるだろう。そして、それを思い起こすことによって(イメージ)、体は過去に成功したときと同じ状態になる。つまり、成功体験時の快い感情は、そのまま脳内ホルモンの分泌を促すことにつながる。ここに成功のためのフィードバックが形成される。一つの成功が次の成功をも呼び起こすのだ。

実際の梅干しをなめなくても、ただ過去において口に入れた梅干しをイメージするだけでも唾液が分泌してくるのと同じように、過去の成功体験(喜びの感情を伴う)をイメージするだけでも、脳からは創造性を高めるホルモン物質が分泌してくるということだ。

成功体験をあまり持っていない人でも、なにか過去において、嬉しかったこと、楽しかったという体験があるだろう。その体験の記憶(イメージ)を使って、脳に喜びの感情を追体験させることもできる。こうして、喜びの感情が脳内ホルモンの分泌を旺盛にし、その作用がさらに喜びの感情を大きくする。そして、喜びの感情は、自然と笑顔にさせる。

このことから、つくり笑顔にしても、それを維持しようとする気持ちが、「笑顔→楽しいイメージ→喜びの感情→精神状態の改善→生理機能の活性化」のように、条件反射的な作用を連続して起こさせ、結局は心と体によい効果をもたらすのだろう。「成功するためには、成功したイメージが重要だ」ということは、昨今よく言われることだが、ここで述べてきたのは、そうしたことの生理学的解釈(の試み)である。

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